十四代李参平

十四代 李参平 紹介

金ヶ江三兵衛家は初代より四代目までは有田焼の作陶をしていました。しかし、四代目のときに不窯(焼成がうまくいかず、ちゃんとした製品が出来上がらないこと)を出し、窯元としての生業を辞めざるをえませんでした。

それから窯元としての金ヶ江三兵衛家は活動せず、名前と金ヶ江家文書を受け継いでいきます。

先代である十三代金ヶ江三兵衛(金ヶ江義人)が国鉄を退職後に「焼物を作らないことは先祖にも子孫にも申し訳ない」として陶祖李参平窯を再興します。それと同時に十四代も将来継承することを決心し、作陶の道を志しました。

2002年(平成14年) 九州内伝統工芸の未来を担う若手工芸家を支援する制度(株式会社九州電力主催)に選ばれ、韓国・利川で現在高麗青磁の技術保持者である奨輝陶窯の崔仁奎先生に師事し作陶活動を行いました。その時の経験により初代李参平が活躍した時代の「初期伊万里」を研究し、「初期伊万里様式の確立」を目指しました。

作業場風景

作業場風景

 

初期伊万里様式の確立を目指し作陶するためには、最初の課題として「陶土の問題」があげられました。

現在の有田焼は、より白い磁肌を目指して100年ほど前から熊本県天草の天草陶石を原材料に使っています。更に技術や素材・生産体制のほとんどが天草陶石に合わせた構造となっています。そのため、それまでと同じ製法では100%泉山の石で作陶することはとても難しく、泉山磁石の陶土を使う職人・作家はほとんどいませんでした。しかし、天草陶石は初代が発見した泉山磁石とは色合いや雰囲気が全く違い、初期伊万里様式の確立を目指すには「泉山磁石鉱の復活」を避けては通れませんでした。また十四代は、有田泉山の石を使うことによって、有田の子供たちが有田焼は有田泉山の石を使って作られていることを誇りに思ってほしいという思いもありました。

試行錯誤の末、これまで専門の業者に一任していた泉山磁石の研究を自らも一緒に行うことで これまでの常識とは違う「使うことができる泉山土」の開発を進めました。

2014年11月、研究の末 泉山磁石100%の陶土が出来上がり、この土を【参平土(さんぺいど)】と名付けました。現在では【参平土】は一般販売も行われ、十四代も参平土を使って作陶を行っています。今後は釉薬の研究、有田町内での登り窯の築窯などを目指しています。

十四代李参平 泉山磁石場にて

十四代李参平 泉山磁石場にて

「初期伊万里」

1600年代、李参平が最前線で活躍した草創期の有田焼を「初期伊万里」と呼びます。李参平をはじめとする朝鮮陶工たちは泉山磁石鉱を発見する以前に、有田の西部地区にある小溝窯や天神森窯で唐津焼系陶器と磁器を同時に焼いていたことが最近の研究でわかってきました。

当時の有田焼は今のように華やかな印象ではなく、素朴で余白を活かし空気を感じる陶磁器が多くありました。その制作には朝鮮人陶工たちの技術と日本人が好んだ中国的図柄が融合され、有田独自のスタイルを作ったといわれます。また、現在では失われてしまった技術や素材が多く、初期伊万里の様式を確立させるには、まだまだ研究が足りません。

研究の過程で400年の時を越えて出会う「初期伊万里」の陶片たちは、ひとつひとつ各所に陶工たちの息吹を感じます。日本・韓国という国の隔たりはなく、人と人の中で生れた感性や情熱を少しでも現代に蘇らせ、多くの方々にも感じてほしい、そういう気持ちが十四代の作陶の基盤になっています。

初期伊万里うつし

初期伊万里うつし

初期伊万里陶片

初期伊万里陶片

「国境なき陶工」

初代李参平が日本に渡り、後世の日本文化への多大なる影響を与えました。その活動は国や生まれ育った環境も区別がない国境を超えた価値観の共有と、白い器を作るという志だったと考えます。この志を「国境なき陶工」と位置づけ、十四代李参平の行動姿勢として宣言しています。

十四代李参平 (日本名:金ヶ江三兵衛(かながえさんべえ)) プロフィール

  • 1961年

    佐賀県有田町稗古場に生まれる

  • 1982年

    佐賀県立窯業試験場にて轆轤成形修学

  • 1983年

    伝統工芸士 徳永象次氏に師事

  • 1993年

    韓国陶磁器比較帰郷展 招待出品 (大田博覧会EXPO)

  • 2002年

    九州電力主催「若手工芸家国内外派遣研修制度」で韓国・利川にて李朝白磁の研究に励む

  • 2003年

    現代韓日陶芸展 招待出品 利川陶磁EXPO

  • 2004年

    九州電力主催「SAGAの若手工芸家作品展」参加 毎年11月初旬に開催

  • 2005年

    伊万里・有田焼伝統工芸士ろくろ成形部門認定
    十四代 李参平(金ヶ江三兵衛)襲名
    佐賀県立九州陶磁文化館にて作品展

  • 2007年

    九州国立博物館にて韓国文化企画展参加
    福岡博多エルガーラホールにて「韓日陶工二人展」開催
    神奈川県茅ヶ崎にて個展開催
    九州電力主催グループ展参加

  • 2008年

    有田町幸平に陶祖李参平窯ギャラリーショップを開設

  • 2009年

    釜山広域市にて十四代李参平 韓日交流帰郷展 主催

  • 2010年

    佐賀大学プロジェクト「ひと・もの作り唐津」に参加。有田焼の源流 唐津焼の研究に励む。
    本格的に泉山磁石鉱の研究を始める。

  • 2012年

    韓国国立晋州博物館 企画展出品

  • 2014年

    「海峡をつなぐ陶匠400年の旅~李参平と沈当吉(沈寿官家初代)をめぐって」展に招待出品

  • 2015年 8月

    「泉山参平土(さんぺいど)」完成

  • 2016年

    有田焼創業400周年記念展開催

  • 2017年

    国境なき陶工プロジェクト開始
    他、百貨店での個展、グループ展なども多数主催・出品

十四代李参平 ろくろ制作風景

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